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コラム

社交不安症(あがり症)にかかわる心理的な話

2023.12.14

社交不安症の人には、いくつかのバイアスが生じていることがあります。よく見られるのが、スポットライト効果や透明性の錯覚と言われる、自己中心性バイアスの亜型です。今回は、スポットライト効果についてお話します。社交不安症と社交不安障害、社会不安障害、SAD(Social Anxiety Disorder)は同じものと考えてください。

 

透明性の錯覚についてはこちら(https://www.wakei-kai.or.jp/pedi/732/)で紹介しています。

 

スポットライト効果

スポットライト効果とは、自分が他者から観察され注目される度合いや、他者が自分について気づいたことを気にする度合いを過大評価する認知バイアスのことです。まるで、常に自分にスポットライトが当たっていて、自分の間違いや欠点が全世界の目につくように強調されていると考えているようであるため、スポットライト効果と呼ばれます。

 

スポットライト効果の例

学校や職場でのプレゼンテーションの際に、自分の言葉遣いやジェスチャーを細かく分析されていると感じることがあります。しかし、実際には、聞いている人たちは内容の全体をもっと一般的なレベルで捉えているだけで、細かいことは気にしていません。

レストランで食事をしている時、その人は周りの人々が自分の食べ方をじろじろ見ていると感じるかもしれません。しかし、ほとんどの場合、他の客は自分の食事や会話に集中しており、他人の食べ方にはほとんど注意を払っていません。

会話の中でちょっとした失言をしてしまった後、自分のミスが他の参加者によってずっと覚えられていると感じるかもしれません。実際には、他の人々はそのミスをすぐに忘れ、他のことに注意を向けています。

 

スポットライト効果はネガティブなことだけでなく、ポジティブなことに対しても起こります。以下はその例です。

新しい服を着て外出した際、その人は自分のファッションが周囲の人々によって特別に注目されていると感じるかもしれません。実際には、他人はその服を見て一定の印象を持つかもしれませんが、その人が思うほど強くは反応していないでしょう。

スポーツの試合でとても優れたパフォーマンスを発揮した選手は、自分の成果が他の参加者や観客によって特に称賛されていると感じることがあります。しかし、他の選手や観客はその成果を評価はするものの、話題にし続けることはないでしょう。

 

スポットライト効果が起こるわけ

多くの人は、自分の行動や思考に注目する傾向があります。これは自分の考えや感情、出来事についてより多くの情報を持っているからです。また、自分自身の視点から物事を見ることに慣れているため、他人の視点を正確に理解しにくいです。このようなことがあり、他者の視点が自分と異なることに気づかずに、過度に自身に注目することになります。

 

スポットライト効果の影響

スポットライト効果があると、社交不安以外にも悪影響が起こってくる可能性があります。スポットライトを浴びていると感じると、他人から期待されるような行動をとりやすくなります。その結果、自分らしさを失ってしまったり、居心地が悪くなってしまうことがあります。また、自分の考えや感情、行動に過度に集中すると、相手のことを考えなくなり、自己中心的になってしまうことがあります。

このようなことにならないためにも、後悔するようなことをしたときや、自意識過剰だと感じることがあるときは、現実的に状況を判断し、他人の視点を想像してみるとよいかもしれません。

 

さいごに

スポットライト効果などの認知バイアスは、社交不安症だけではなく、私たちの日常生活や人間関係に影響を及ぼす可能性があります。それを防ぐためにはまずその存在を認識することが大事です。